意外と難しい畔ぬり作業、揉め事になるので綺麗に仕上げる努力を!
新潟でも桜の開花宣言が発表されて、陽気も春を通り越してもう初夏のような気温の中、田植えに向けて準備も着々と進んでおります。
田んぼでの作業でシーズンの初めに一番最初に行う作業は、殆どの場合『畔ぬり』と呼ばれる田んぼの境目の盛り土を整備するところから始まります。人によっては先に圃場内に除草剤を散布したり、有機肥料を打設したりと多少個性がありますが、基本的にはこの畔ぬりから始まります^^。
畔は農地の範囲を明確にする事が主な目的です。毎年必ず整備しないと崩れて次第に無くなってしまいます。適度に高さも保たないといけないので、崩れてしまうと作り直すのが非常に面倒です。
◆畔ぬりは気を付けないと隣接する他所の田んぼの所有者と揉める事になる◆
この畔と言う部分は、隣近所の田んぼと土地の境目を明確にしている役目も担っています。農地は個人の所有物である事が殆どですので、例えば機械を押し付けすぎて隣の土地に押し入ってしまうような事がありますがこれが結構マズイ^^;。ヤバいケースだと裁判沙汰になって土木業者に直させて、その代金と迷惑料を請求されたケースもあります。
特に自分のように若手農家だったり、地域おこし協力隊みたいな所謂『よそ者』の人だったりが狙われやすいのですが、隣の田んぼの持ち主は常に監視してやらかすのを待っているような人も、実はそんなに珍しくないですし、自分の地域でも3人知っています^^;。さいわい自分は何も巻き込まれていませんが、何十年もやっているベテラン農家さんでもやらかす人は時々います。中には強く言えない人の田んぼに向かってワザと押し入って広げたなんて話も…。
勿論土地の話なのでちゃんとしなければいけません。いい加減なやり方をして境界を荒らしてしまう事は絶対にしてはダメです。ですが、機械作業が主流となった現代農業では、若手農家の機械作業の習熟を待ってくれるほど寛容な状況にはないと思った方が良いです。端から見れば春のほのぼのとした光景に見えるでしょうが、中身は土地の境に睨みを利かせ合うドロドロの人間関係がありますから。
◆畔ぬり機◆
畔ぬり機ってそもそもどんな機械?なんて事もあろうかと思います。簡単に機械についてお話させて頂きます。
トラクターのPTOと呼ばれる駆動機構を利用して、回転動作を使いながら文字通り畔の法面を塗り固めていきます。現在はリモコン制御で格納などができるので、自走する際も幅が出過ぎる事も無くなり、油圧によって押し付けられるので調整が狂う事もなくなりました。
●構造は単純、でも奥が深い造り
このUFOのような円盤が畔のあの斜面の形を形成してくれます。右側に飛び出している部分で、畔の天盤部分を平らに均して整備します。外側からは見えにくいのですが、機械の内側に小さな耕運機が付いていて、それが土を解し飛ばして円盤に送って、円盤が形を整えていく構造になっています。ただ塗り固めるだけの構造ですと、年々畔が小さく低くなっていってしまいますので、ちゃんとそうならないように土地も盛ってくれるようにできています^^。
反対側に見える小さな円盤は、田面に突き刺さって反対側から畔に向かって円盤を押し付けたり、逆に円盤から押し戻されないようにしてくれています。いつも思うのですが、こういう機械を設計するエンジニアの方ってホント凄いですよね!人生をやり直せるならそういう仕事に付けるように頑張ってみたいなw。
●真っ直ぐ走るのは実は結構難しい
機械作業って一見すると非常に便利に見えるのですが、綺麗に仕上げるのは結構難しくて、何十年やっている人でもうまくいかない事も結構あります。勿論、拘ればキリが無いのですが、綺麗に仕上げる技術がある方が堅牢な圃場整備ができますし、何より粗探ししている他の人につけ入るスキを与えませんw^^;。
田んぼって、乾いているように見えて中は結構グチャグチャな事が多いです。そんな状態の中重たい機械がズンズン進入していけば当然埋まります。デフロック4WDのトラクターでさえ進まなくなります。
そんな状況で畔ぬり作業をすればご覧の通り圃場はグチャグチャ、畔はグニャグニャ、トラクターは泥まみれ…。兼業農家は普段は会社員などをしてるので時間の自由はありませんから、出来る時にしないといけないのですが(汗)。田んぼが乾くのを待っていると、次の雨に打たれてまた結局同じ結果になるんです。なので、多少無理してでもやらないと^^;。キャタピラー式のクローラートラクターならだいぶマシらしいのですが、我が家にはそんな500万円も800万円もするような高級車を買うお金はありません!かつてのセルシオ並みの金額じゃねーか!。
●小まめに圃場をチェックして、柔軟に判断し、リスケする
コチラが比較的真っ直ぐできた畔ぬり。途中で曲がっている所があるのは、友達から電話が来た所ですねw。機械の押し付けが足りなくてだいぶ幅の広い畔が出来上がってしまいました。もう少し狭い方が良いですね。と、言うのも一見しっかりできているように見えても、元の幅に届いていないので中はちょっとスカスカになっています。こうなると雨風で稲刈りの頃には崩れてしまうでしょう。機械の押し付けはしっかりとですね!。
左側はよく乾いて走りやすい田んぼ。右側は水はけが悪く、走りにくい田んぼです。隣接する土地なのにこれだけ条件が変わる事も珍しくありません。なので連続作業が理想なのですが、ここは一旦引いて別の圃場を作業します。その方がいちいち埋まっているよりずっと良いですから。
◆綺麗に仕上げるコツ◆
農業、特に田んぼは隣の土地の所有者との緊張感が常にあるものです。なのでなるべく綺麗に仕上げる努力をしないと必ず揉め事に繋がります。自分自身が大した事無いと思っても、隣の人にとってはとてつもなくストレスになります。人が失敗するのを常に待っている農家さんも普通に居ます。
機械作業は、自分が使う機械が持っているクセのようなものを掴んで行うしかないのですが、コツを掴めば誰でもちゃんと出来るようになります。
- 動作は早すぎず遅すぎず、適正ギアでエンジンもPTOも適正回転を
- トラクターを真っ直ぐ走らせる目線、手元足元ではなく遠くを見て視野で把握する
- 上手くできないのには必ず理由がある、何かおかしいと感じたら適宜チェックを
- 段取り八割作業二割、手順を守り体制が整って初めて進むこと
- 機械に対して遠慮しない事、正しく使えば壊れません
コレをコツと言って良いのか自分でちょっと疑問に思ってしまいましたがwこんな要領でこなしていけば必ず上手くできるようになります。もっと言うなら、経験値を積むしかないので^^;。
ですが実際には上手くできない内は散々バカにされます。バカにしている人達は自分の事は棚に上げますw。なんなら全く知らない上に、近所でもない人に『なってない!』と怒られる事もあります^^;。農家の後継ぎをしなかった長男さんなんかに話を聞くと、親がまだ慣れなかった頃にこんな目に逢っているのを見て『絶対農家やらない』ってなったくらいです。
初めは皆初心者ですが、初心者を許容できるほど農業界のフトコロは深くありません。初心者に場を荒らされて迷惑するのはベテラン農家ですからね。それでも無視して自力で頑張っていくしかないでしょう、ではまた^^。
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