令和4年度も無事に稲刈り終了!出荷した米は全量一等米だった – 農家辞めます! 
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2022-11-23

令和4年度も無事に稲刈り終了!出荷した米は全量一等米だった

 今年も無事に稲刈りが終わり、出荷が終わり、検査が終わりました。

 コシヒカリBLが522袋・コシイブキが128袋の計650袋、19t以上の豊作となりました!^^。

 我が家では水田の作付けが約4町で、一反あたり8俵以上の収穫量を目安としている(多く収穫する家では10俵なんて事も)ので、十分穫れたと思います!。天候自体は昨今の温暖化の影響で決してベストとは言えなかった(夏場の猛暑)のですが、降りすぎず足らなすぎない雨のお陰で期間全体を通してのバランスは良かったと思います。

 近隣の圃場も含め特に病害虫の話題も出ず、2品種とも一等米として出荷できました!

刈り取り後の籾摺り作業を動画にしました

◆◆◆

稲刈り作業の全体

 稲刈りと一言で言いますが、コンバインでの刈り取り作業から乾燥、籾摺り、選別、梱包、出荷、検査ときて、この内検査だけは出荷先で穀物検査士の資格持った検査員が検査を行い、それをもって完了となります。田植えの時と違って結構工程が長いですね^^;。なので毎年田植えよりも稲刈りの時期の方がグッタリしています(汗)。なんせ会社の仕事量や勤務時間が変わるわけではないので。。。

 自分の仕事が変わってしまった都合で去年に引き続きコンバイン作業は手が回りませんでした。なので義父が刈り取り作業の大半を行いました。籾摺りや選別工程は、義父が眼が悪い都合でどうしてもできないので会社の合間を縫って自分が全て行います。

乾燥

 現代稲作農業では昔のようにハザ木にかけて天日乾燥…なんて事はしているヒマは無く、全て機械にかけ灯油をガンガン燃やして一晩で乾燥を終わらせます。

 大体14%程に含水率を設定して、あとは機械がチャーハンを炒めるみたいにしてゆっくり時間をかけて籾の乾燥を行ってくれます。

 時々サンプルを取り出しては、簡単な検査機にかけて乾燥機だけではなく実際の乾燥度合いを見て仕上がりを判断します。

籾摺り、選別

 乾燥が終わった籾を殻を剥いて玄米にする工程です。200vで稼働するモーターで一気に籾殻を摺り剝がしていきます。剥がした籾殻は外へ吹き飛ばし、玄米は更に選別板で剥がしきれなかった籾やその他不純物と分けてパック機へ送り出します。

 昔は網で籾や不純物を選別していたのですが、結構粗混ざりして大変な時がありました。と、言うのも、同じ品種でも圃場毎に生育に若干の差が生まれ、調整が一定のままでは安定して選別できなかったのです。

 今はこれが板になって、揺すりながら選別する仕組みに変わりました。選別は安定してて、機械の調整もそこまで頻繁に弄くる必要が無くなりました。その分作業ペースが少し落ちたりもしていますが、調整次第でそれも上げる事ができます。

梱包

 籾摺り機で選別した玄米を今度はパック機に送り出します。送り出された玄米には未成熟米(所謂クズ米)が混ざっており、このまま袋詰めしたらエライ事になります。

 そこでこのパック機では、二重構造になっている筒を使って遠心力で未成熟米と玄米を選別します。筒はそれぞれ逆方向に回っていて、粒の軽い未成熟米は外側へ飛ばされて吐き出し口から出され、粒の重い玄米は上に送り上げられて計量器に落とされます。

 余談ですが、『クサネム』と言う植物の種が時折混じる事があるのですが、これがどの工程の選別もすり抜けて最終的に米袋に入ってきてしまいます。粒のサイズと重さが玄米とかなり近い為そのような事が起こるのですが、見た目は真っ黒で一目で異物である事が分かります。

 これが混入してしまうと最悪等級が付かず、30㎏の米袋が二束三文になってしまいます。色彩選別機なんて物もありますが、一番は刈り取り前にクサネムを除去するように努める方が良いです。

出荷

 袋詰めが終わったらいよいよ出荷です。我が家では米の集荷業者に全量出荷しています。倉庫は広くなく、リフトも無いので手作業でトラックへ積み込みます。一応ベルトコンベアを持ってきてそれでトラックに上げますが、時々申し訳なくなります^^;。

 搬出が終わった米は集荷業者によって穀物検査に回され、等級が確定次第その年の卸価格が決定します。

作況指数

 その年の米の出来を判断するために作況指数という数値をよく使います。これは、1町辺りの平年収穫量を100という基準にして当年は良かったのか、はたまたイマイチだったのかを判断します。

 100前後だと平年並みで、102以上だと良い、98以下になると悪い…と、ザックリそんな感じの指数です。実際はもう少し細かく指数の意味が決められています。

 今年度の新潟県の作況指数99で平年並みとなりました。我が家は結構良い方だったので体感的にもこの数値で合っていると思います。

稲刈りは稲作の中で最も作業が多く忙しい

 米どころ新潟では毎年田植えシーズンに入ると、特にGWでは家族総出で田植えをしてるような光景を見かけます。あれを見ていると田植えって結構忙しそうに見えますが、実際には稲刈りの方が遥かに作業量が多く忙しいです。田植えなんてあんなもの、4町あっても一人でも十分できますから。ただ、田植えはまだ手作業も多いので親戚などの手を借りたがる傾向が今でもあるみたいです。

稲刈りはご都合主義

 稲刈りを行う最低条件として、晴れている事が必要です。稲が濡れていたりするとコンバインの構造上どうしても巻き込んで団子になってしまい、機械に詰まって最悪故障の原因になったりもします。朝露だけでもこんがらがる時もあります。

 ここで問題になるのが、稲刈りを行う日は晴れてなければならないので予め会社に休みを頼む事ができないのです。できそうならその日の朝急に『稲刈りするので休ませてください』と言わなければなりません。当然ですが、大ヒンシュクです。でもできないものはできないので、自分は夜中に稲刈りを行っています。それしかありませんから

田植えは結構融通が利く

 それと比べて田植えなんてハッキリ言って、会社から帰ってきてからの一時間だけ使って植えられるだけ植えようとか、雨の日でも普通に田植え自体はできます。稲が伸びきる前に終わってさえしまえば良いので。育苗箱は後日ゆっくり洗えば良いです。

 ただ、育苗箱は結構重くなっているので一人で全部やるとなるとそれなりの重労働です。それもあって家族総出で作業を行う光景が今も季節の風物詩になっています。

ハネ出しの玄米と機械化農業の犠牲

 籾摺機の中には、機械の構造上どうしても出てこない玄米が残ります。粗混ざりもありますが、基本的には普通に食べられる玄米です。

 ただ、機械の中に残った物なので品種が混ざってしまっていたり、胴割れを起こしていたりするのでコレを出荷米に混ぜる事はないです。

 残留米を取り出すための構造にはなっているので、最後に全部取り出して掃除し、取り出した玄米は我が家の取り分になります。

 籾や未成熟米が混ざっています。このままパッカーに入れて選別をかければ玄米だけにできます。

余談

 籾摺り機の中には、枝や小石を振り分ける所があるのですが、ここにコンバインに巻き込まれて籾と共に乾燥機にかけられてしまい、ミイラ化したカエルやイナゴが沢山網にかかります。

 なんとも思わない人はなんとも思わないでしょうし、農業は大量の小さな生き物を犠牲にして成り立っているので今更と言う人もいるでしょう。

 でもこれがコンバインのような機械農業ではなかったらどうでしょうか。トラクターによる春の耕起作業でも土に潜った生き物も一緒に巻き込んで畑や田んぼを起こしますが、極端な話にはなりますが手作業ならここまで大量に生き物を殺したりしなかったのかなと、いつも考えます。

 農業は聞こえの良い言葉と沢山使います。やれ自然との共生だとか、やれ小さな生き物の住処だとか…。でも『言っている事よりやっている事』が真実ですので。

稲刈りの度に思う『稲作の価値』

 こんな話したら身も蓋も無い感じになりますが、現在下落を続ける米価そのものが、日本の稲作の価値だと思います。それでも外的要因によって付いている価格なので、実際はもっと低いことでしょう。

 米価が下落している原因はいくつかありますが、単純に消費量に対して生産量が多すぎるからです。農薬や機械の進化、大規模化などで生産効率はかつての比ではなくなりましたから。

 自分の地域でも飼料米などコシヒカリではない品種の作付けにご協力を!…と触れ込んでいますが、自分だけ素直に言う事を聞いて値段の安い米作りをして他の農家がその分潤うような事があってもなんの意味もありません。それなら安いなりにまだ元が取れるコシヒカリを無理して作付けしますよ。

 農業を取り巻く問題はいつの時代も山積ですが、見えない誰かの為に本当の価値が歪められているのだとしたら、現場の一線にいる我々は一体何をしているのだろうかと思案してしまうのです。

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