後継ぎがいない?そんな事ありません、大勢います。
自分が遥か子供の頃から呪文のように囁かれている『後継ぎがおらん!』と、いうトピックス、近年は農家に限らず中小企業でも後継者不足で廃業する話題が増えています。
結論から言います。大げさな話抜きにして『後継ぎなど大勢います』。断言できます。それは農家に限らず、中小企業でもそうだと言えます。
自分は農家なので、農業にフォーカスしてお話したいと思いますが、実際のところ農家も中小企業も、なんなら漁師も猟師も事情は全く同じと言って過言ではないと思っています。
後継ぎ問題はそのまま高齢化問題に繋がる
『人生100年時代です!』、そんなとんでもない話が出て久しいですが、自分は当然のように100年など生きる気はサラサラ無いのでとりあえず右から左へ…。
ここで重要なのは100年がどうとかよりも『現役期間が、長寿化した分伸びていますよ』って事です。自分の祖父母は遠い昔、60代でこの世を去りました。今から30年も前の話です。当時はそのくらいで生涯を終えるのは特段珍しくはなかったですし、なまじ長生きして介護になるよりサッパリ逝って子供に迷惑かけたくないと考える人が多かったと記憶しています。
現在70代の義父は、30代で農家を継いだそうです。理由は義祖父(故人)の年齢による不調からです。義父が農家を継いで本格的に兼業農家としてやり始めたのは、現在の自分よりも若い頃の話でした。
この話になると必ず決まって『今の30代なんてまだまだ子供だからWWwww』と、いう話が出てきます。この手の話をする人は、自分より年下なら全員若者と言うのであんまり相手にしなくていいです^^;。
引退が遅くなる程、継承が遅くなる
当然の話ですが、今問題になっている後継者不足の根幹にあるのはこの部分だと思います。後継ぎ候補が十分成長していないとか、後継者と現役の人間関係とか細かい話はあるのですが、最終的に詰まるところはここだと思います。
現代の農家の大多数が『親が死んだら後を継ぐ』と言った具合です。農家に限らず中小零細企業も同じような塩梅だと思います。農業でも事業でも継承した後も親が生きていたらそれは『自分が社長、親が会長』状態なので、実権は結局親が握っている事になります。自分の住んでいる農村にも80代の親の言いなりになっている60代の息子は普通に居ます。
自分は現状『後継者候補』ではありますが、もし義父が100歳まで生きたとしたら、後を継ぐ事無く自分が先に寿命がきて死んでしまいます。そうでなくても今すぐ後を継いだってすでに30代後半…。義父が存命で会長状態になる事を考慮すると、ざっと後20年くらいは主体性を持たせてくれない事になります。
仮に自分が農業に対してそれなりのモチベーションを持っていたとして、50代の終わり頃になって後継いでくれとなっても普通に断るでしょう。
70代社長、36歳の息子に会社を継ぐのを躊躇している
コレは実際に身近に聞いている話なのですが、ある鉄工所の社長が36歳の息子に後を継がせたいと考えているらしいのですが、『せがれはまだ子供だから会社経営は出来ない』と言って、なかなか踏ん切りがつかないそうです。
とうの息子さんは、一度は別の会社に勤めたものの、親の会社を継ぐと言って時期後継者としてその鉄工所にずっと勤めていて、営業、現場、工場と仕事を回せる上に、必要な資格は全て揃っている。社内での先輩職人さん達とも関係は良好で、新人さんもちゃんと面倒を見れている。端からみれば非の打ちどころが無いのです。もう十分立派な後継者です。昔はボンボンらしい振舞はあったものの、今更そんな事も無く、息子君は今年小学校に上がりました。
現在の社長は22歳の時に自営から初めて今の工場を作った社長です。時代の後押しもあって、それなりに立派な工場を経営できています。…って、今の息子よりずっと若い頃に独立してんじゃん…。どうして早く会社を任せないのか聞いてみてもせがれはまだ子供だからの一点張り。そのせがれは今、『もう自分で会社起こそうかな…』と、言っていました。
後を継がせると自分の仕事がなくなる
ウチの義父もそうなのですが、結局農業でも事業でも、任せてしまうと自分の仕事が無くなってしまうのがどうも気に食わないという事があります。気持ちは分からなくもないです。
ですがそうやってズルズル間延びしている内に後継者の殆どが『旬を過ぎてしまう』のです。旬が過ぎてしまってから『今更かよ…』てきなモチベーションで事業継承しても成長は無いでしょう。少なくとも自分はそう思います。
これからは後継ぎではなく独立が主流になる…と、思う
特に今の若者の中には、20代で才能もスキルもセンスも飛び抜けている子が、実際に大学在学中に企業してそのまま社長になったり、フリーランスとして企業と対等に取引したりと凄い子が沢山います。
農業の世界も実は例外ではなく、親から農地を継承して農業をする他に、『営農法人として独立』し、近隣の地域の農作業(田植えや稲刈りの他、耕起や除草、管理全般など)の請負をして売り上げを立てる会社が増えてくると思います。そんな将来を見越して現在農協では、作業委託に関する参考賃金なる資料も配布しています。これはその地域でどれくらいの相場で作業委託請負が行われいるのかを表した資料です。
実際に自分の地域でも米の集荷業者が作業請負を行っている例が三件ほどあります。それらに作業を委託している農家は、後継者が居なくて依頼しているのです。それとこれはホンネとして、隣近所に田んぼを頼んで足元見られたくない部分もありますw。
この様に実は農業界でも『後継ぎより管理委託』の流れが強くなってきています。そこを狙って米の集荷業者を始め、力のある農家なども営農法人を立ち上げていずれ株式会社化していくと思います。年老いた息子に今更ヤル気など出るはずもないので。
継がせないだけで、後継ぎなんていくらでも居る!
実際のところどこの業界も後継ぎなんていくらでも居るんです。単純に継がせていないだけです。一番目立つ理由は『仕事ができない(やらせられない)』です。それは結局、後継者ではなく自分のコピーが欲しいだけです。大会社でもない限り、多少できなくてもそこから伸びしろがあればやっていけます。任せたら崩壊する!って思っている人も少なくないでしょうが、そんな事言っているから後継者が居なくて廃業するんです。
今の世の中、後継者が居ないと言っていることろは大抵、『経営者の器になるのを待っている』事が多いですが、人はいつまでも成長を続ける事はできません。ある程度のところまで行ったら衰退が始まります。器がどうとかっていう話は後から付いてくる事なので、後を継がせたいと思ったら今すぐ継がせた方が良いです。でないと自分のように最終的には、終う事を考え始めてしまいます。
今の日本には後継ぎなんていくらでも居ます。ただ、現在の経営者のコピーが居ないだけです。いつの時代も若い人が未来を作っていきます。後継者が居ない事まで若者のせいにしている今の日本ならもう、今ある農家も会社もみんな潰れて若い人たちがどんどん新しく立ち上げていった方が1000倍マシな世の中になると思っています。
コメント4件
地域の農家、ガラス越しでの会話が最良の選択でしょう!
的確な分析かと思います。今70歳観光農園の農園主です。3年前から後継者を探し、何人かの候補者を経て今年関係性がとれるご夫婦に出会いました。ほどよい間をとりながら、継承に向けさなざまなことを伝承しています。