農家と種の関係性、米農家でも種子を自給している訳ではない – 農家辞めます! 
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2021-03-21

農家と種の関係性、米農家でも種子を自給している訳ではない

 こんにちは!Daiです!

 米や野菜は当然、『種』からできています。そして我々が口にしている米や野菜の殆どが、細かい分類や種別については割愛しますが、その種になる部分です。

 家庭菜園を始めたばかりの人とかなら少しくらいは疑問に思ったはず。『できたこの実から種を取ったら、わざわざホムセンで種を買わなくてもまた野菜を作れるのでは?』と。実際はそう思っても、食べてしまうのが殆どでしょうから実践する人は少ないと思います。

 結論から言うと、それは出来ません。正確には、多少それっぽく形になったりもするけど、ちゃんと育たないです。多くの野菜類は栽培用のF1種と言う物で、優秀な実を付ける代わりに繁殖力は皆無に等しいくらいです^^;。豆類など中には必ずしもそうはなっていない物もありますが、出来た実から種を取っても育たないと思っておいた方が良いです。

 では米農家はどうしてるのか。毎年数十キロ単位の結構な量の稲作用の種子を使っていますが、これらは全て『種子用米生産者』から、問屋などを通して仕入れています。なので自分の立場としては、もっぱら育てて仕上げるだけです。

◆◆種子の仕入れはどんな感じなのか

 食肉を撮る為の畜産業なんかでもそうなのですが、牛、豚、鶏は、別の牧場から子供を買い受け、それらを自分の牧場で大きく育てる『肥育』をして出荷するのが一般的な畜産業の形です。農家も同じように出来ていて、種は種屋が作り、農家はそれを育てるのが役割です。

 ではその仕入れた種子とはどんな物か、我が家は稲作がメインなので稲作用種子でお話します。

●コシヒカリBL

 コチラは一般的な新潟県産コシヒカリの品種、『コシヒカリBL』の種子です。今年は我が家は90kgを仕入れました。詳細な価格は伏せますが、仕入れ価格は5万円にちょっと届いていないくらいの金額です。

 この種子は新潟県種子協会によって管理され、JA越後中央の種子場で4種類のコシヒカリBLを掛け合わせて採取されました。4種類も使うのには理由がありまして、稲作ではいもち病というとっても怖い病気があるのですが、このコシヒカリBLはいもち病にとっても強い品種として開発され、更に数種類を掛ける事でリスクを分散し、尚且つ病気が発生してもどこから来たのか追跡できるように管理されいるのです。この品種の開発から生産量は飛躍的に伸びました。

●こがねもち

 コチラはこがねもちと言う品種で、その名の通り餅になる米です。先ほどのコシヒカリBLとは別の種子場にて採取されました。12kgを仕入れて価格は7000円に届かないくらいの金額です。BLと違って餅系品種は病気類に強く、いくつかの品種を掛け合わせているような事は無いそうです。

 ですがこのこがねもちも、自家栽培で種子を取得する事が出来ない物となっています。我が家では餅米は問屋さんから作ってくれと頼まれている形になりますね。餅の需要が年々減っていくので、生産者がガンガン減少しているそうです。因みにこのこがねもち、育てるのは育てやすいのですがサッパリ儲けはありません^^;。

●こしいぶき

 早生品種のこしいぶきです。24kgの仕入れで、価格は13,000円に届かないくらいです。我が家の様な小規模農家では、ある程度品種を分けないと収穫期が丸かぶりで大変な事になるので、種類が豊富なのは有難いですね。

 仕入れの単価その物はコシヒカリBLと同じなのですが、当然相場はコシヒカリBLよりも安く、耕作のスケジュールを組むくらいしかメリットが無いのですが、結局田んぼを回すのが優先で、稲作によって生活が成り立つかどうかは二の次三の次って事ですね^^;。

◆◆種子は仕入れた方が効率が良いのは確か

 今でもコシヒカリの原種に近い種子を、自家栽培で守っている農家はあります。コシヒカリBLも世に出た頃は元のコシヒカリと比べても不味い米だと散々な言われようだったらしいですから(汗)。

 ですがどうしても病気などで最悪全滅してしまうリスクがあります。これは農業の歴史の中でも常に悩みの種でもありました。種屋はこれらのリスクを最大限減らしてくれているのです。『F1種ばかり発明して、農家が自分で種子を自家採取できないようにしているんだろ!』。昔はこんな事を言っている農家も多かったと聞いています。

 ですが、種子の自家採取ができない代わりに、低リスクで高品質な作物が作れるのも事実です。と、言うよりそこが一番の目的です。なんの作物でもそうなのですが、原種に近い物は収量も品質も耐病性も劣る事が殆どです。だからこそ品種改良が進んできた訳です^^。

 農家がそれぞれ単体で種子の生産管理から栽培、卸とやっていくのは、兼業ではまず不可能でしょう。日本の農業人口の大部分をいまだに兼業農家が占めている以上は、分業していくのが良い在り方です。それに、種子を取り巻く情勢は非常に複雑なので、権力が管理する方が良いです^^;。

 農家は種屋に生かさず殺さず飼われているなんて言う事もいまだにありますが、自分はせめてこれを、持ちつ持たれつと言っていきたいですね。

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