なぜゴールデンウィークに田植えをするのか – 農家辞めます! 
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2021-05-08

なぜゴールデンウィークに田植えをするのか

 ようやく田植え作業が終わって、パソコンデスクに向かう事ができましたw。農繁期中の、特に稲作は纏まった作業になってしまうので、一回始まるとどうしても手が空きにくくなりますね^^;。

 そんなこんなで無事に今年も田植え作業が終わって、ここからが本番と言ったところなのですが、新潟ではこのゴールデンウィーク中の田植え作業が風物詩となって久しいです。新潟に限らず全国的にこの春の大型連休に作業が集中するようですね。

 実は本来田植え作業を行うのは5月の4週目~6月の2週目くらいがベストとされています(地域や品種によって異なります)。実際JAでも早植えはなるべく控えて、品種や地域特性に適した時期の田植えを行うように啓発しています。農業は植物の性質に合わせて行うのが古来からの習わしなのですが、現代農業では促成栽培が基本なので、その植物が本来持っている特性は殆ど無視されて栽培がおこなわれる事が多いですね。

 ではなぜ本来の作付け時期を無視してゴールデンウィークに田植えを行うのか。これはひとえに『世間に合わせてそうせざるを得ない』という事です。田植え作業はそれなりに人手が必要になります(自分は基本一人でやって十分間に合ってますが)。それだけじゃなく、離れて暮らす息子や親せきを呼び集める口実にもなるので、会社に迷惑をかけないで、尚且つ皆を呼び集められるタイミングとしてゴールデンウィークが選ばれるのです。農作業を理由に会社を休むと、下手すりゃ解雇されてしまうのでゴールデンウィークは纏まった作業の為に使いやすいと言えますね^^;。

GWで植えるのは早いが、生育に影響は無いのか?

 これは時々話題に上る事があるのですが、実際にGWの田植えでは早いのはみんな百も承知なのです。ではその早植えは生育に影響は出るのだろうか?答えは『よく分からない』ってカンジですWw^^;。なんじゃそりゃ!って言いたくなるでしょうが、作柄が悪かった年は早植えのせいにしたり、反対に良かった年は早植えが当たったと喜んだり…農民のマインドなんてホント都合がいいものですよw^^;。この辺も農業が天候に左右されると言われる所以なのですが、この話はニワトリタマゴな話だったりします。

 一応現状では我が家はこれと言った問題は起きていないのですが、以前のようにコシヒカリの原種に近い品種の米を栽培していたら、きっとこうはいかなかったと思います。それぐらい作物の品種改良とは画期的であると言えます。

会社に迷惑をかけなくて済む

 個人的にはこれが一番の理由です。家が農家だろうが何だろうがそれは会社にとっては全く知った事ではないからです。自分も何度も何度も『農業なんか頑張らなくていいから会社の仕事頑張ってくれよ』と言われてきました。それでも米作りは国家の基幹産業として位置付けられているから笑えない話ですよ。国民の食を支えている我々の立場は、資本主義では一番迷惑な存在なのです。

 農業は基本的に兼業でなければ成り立ちません。自分が会社員ではなく、何か自営でもフリーランスでも自力で稼げる人間ならここまで言われる事も無かったのでしょうが、致し方無いと割り切っています^^;。

 自分が住んでいる新潟は土建王国と呼ばれた歴史がある程に外仕事が職業として多く従事され、基本的に休みは日曜日以外無いのが普通です。つまり週休一日ですね(これでも昔と比べりゃ休んでいる方)。なので農繁期に入る頃には、休みの事で会社と揉めるのにうんざりして一思いに会社を辞めている事が多かった時代がありますw。お陰様で何でもできるマンの器用貧乏になりました^^;。外仕事系は人は消耗品と一緒なので、会社を辞める事は反対された事は一度もありませんでした。

親戚が集まるきっかけになる

 田舎は暮らす場所ではなく、『田舎という会社で働く場所』と思っていますが、似た様な認識の人は結構多いようで、それ故に人は田舎から離れていくのは否定のしようがなと思うくらいです。親戚や親子が揃うのが一年で正月しかなくなるのは、家族としてもさすがに寂しいものがあると思います。

 この田植えと言うイベントは、そんな離れて暮らしている子供や親せきが一同に会してみんなでワイワイ仕事をする良い機会としても重要な役割があると言えます。因みに我が家は親戚も義理の兄も誰も来てくれませんがw。

 この時期あちらこちらの田んぼでは、一家総出で日本の食の為に田植え作業を頑張っている家族を直接見る事ができます。米王国新潟では、もはや風物詩ですね。

 昨年はこの田植えの為に集まった親戚家族で新型感染症のクラスターが発生し、大変な誹謗中傷の的になった事案がありました。確かに、自分は3.8町の田植えを基本一人でやっているので、集まってまでやるような事ではないと思います。ですが、イベントとしての側面が強いこの田植えと言う行事を大切にしている人の事を思うと、なんだかやるせない気持ちにもなります。

今後は無くなっていくであろうGWの風物詩

 農業は今後、農地の集約を経て専業化が進んでいくと考えられます。むしろ早く兼業に頼るような事は辞めるべきだと思います。兼業農家は、規模にもよりますが社会的に割を食っている部分があります。その結果人生を棒に振る事だってあるんです。楽しんでやれるならそれに越した事はないですが、少なくとも米に関しては零細農家は無くなっていくのがこれからの時代の食糧生産の形に合っていると思います。すでに人口が減り空き家が増えている農村は、専業農家の為にあればそれで良いでしょう。それでもそうしないのは、生産者の立場が強くなる事を懸念している部分もあるからです。現在の日本では、立場の弱い兼業農家を買い殺している方が国的にも効率が良いのです。

 現在の形のGWは昭和60年に改正された祝日法によって出来上がっているので、風物詩と呼ぶにはまだ歴史が浅いのでしょう。今でも会社を休むのは悪とされている世の中、働き方改革が進んでももう間に合わないと思っています。

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