『稼ぐ農業』は悪い事?ここにも農村衰退の原因があった
我が家では自前の田んぼで稲作を2ha・預かっている田んぼで稲作を1.8ha・稲刈りや畔ぬりなど一部の作業委託をされている田んぼが1.5ha・自前の畑地が2a・借りている畑地が1.5aで・米や野菜を作付けしています。
品目はコシヒカリBL・こがねもち・こしいぶき・玉ねぎ・ブロッコリーを纏まった規模で、ある程度小規模でナス、ピーマン、ソラマメを出荷品目としています。
その中でも今回話題にしたいのが、玉ねぎやブロッコリーなどの纏まった規模で栽培出荷している品目の畑作についてです。これらは1品目が畑にズラッと並んでいるので、綺麗に育つとなかなかに圧巻です。我が家の周辺では水田稲作が9.8割なので、この様なスタイルで畑作をすると非常に目立ちます。
実はこれ、地域性にもよりますが、村で噂をされる原因にもなり、それによって関係性がこじれる事もある程です。ちょっと大げさに言ってはみましたが、実際自分が体験したお話を残していきたいと思います。
◆『あんた稼いでいるな!それなら畑代を払え!』◆
ズラッと並んだ玉ねぎの苗達、夏には収穫して出荷できます。実はこの畑、数年前に『畑を使っていなくて荒らしてしまっている、誰か使ってくれないか…』といった内容で一先ずウチが引き受けた畑地なのですが、正直こんなもの預かってもどうにもならない。自分の畑があるので、自分の家の分はそれで十分だったので新たに畑地を預かるなんて面倒以外のなにものでもなかったのです。
お人よしがいけなかった…。畑を弄るのも費用がバカにならないので、何とかその分を賄えないか考えた挙句、纏まった出荷量を出せるように作付けを行う事にしました。
●いう程儲からないが、思惑通りある程度は賄えた
最初の年にブロッコリーを4000株植え、出荷率は約7割を達成できた。一株80円程で競り落として頂き、最終的に20万円程の売り上げに。ここから虫害対策の農薬代(ダイアジノン粒剤)や除草剤(グリホサート液剤)、育苗用の紙ポットや育苗培土、種子代や化成肥料に土壌改良の為の石灰、更には散布機を動かすための燃料代など諸々の費用が6万円程要し、細かい話税金類を控除(給与の分離課税から見てその他収益と合算)すると手元に9万円程が残ってくれた。コレを元手に翌年の作付けの費用に回すと可処分所得は3万円程になった。
多少放漫経営な部分はあるものの、結構リアルな数字だと思います。約5か月畑を弄って残ったお金が3万円…笑うしかないですが、コレがリアルです!Ww。今はちゃんと考えてます^^;。
●連作障害を避け、品目を玉ねぎに変える
ブロッコリーの栽培が終了するのに合わせて夏の間、玉ねぎの苗を仕込んでおいた。ブロッコリーの収穫が12月に完了して、そのタイミングで同じ畑に玉ねぎを植える。我ながら完璧なプランでした。そのまま玉ねぎは雪の下へ、翌年の夏に収穫できるよう祈りました。
翌年には首尾よく玉ねぎが収穫できました。当たり年だった為か、収量はなんと2t!ハイエースで二回戦走りました!これも収益の内訳はブロッコリーとほぼ同じでした。可処分所得にしたらブロッコリーよりも残ったと思います。
この姿をこの畑の持ち主が見ていました…。
●だいぶ稼いでいるな!
突然でした。嫉妬に狂ったように『ここは俺の畑だ!儲かっているなら分け前をよこせ!』と言ってきたのです。自分は快諾しましたw。当然です、元々預かる気は無かったので、稼ぎの明細を見せて、可処分所得全部渡して、その場でそのまま畑を返す事にしたのです。そしたら…
地主『畑を辞められたら困る…』
Dai『自分も、自前の畑地に田んぼに忙しいので元々いりません…』
地主『じゃあまた畑が草だらけになっても良いのか!』
Dai『自分の畑ではないので知ったこっちゃありませんぜ…』
地主『でもあんたん家稼いだだろ…』
Dai『こんなもん、ちっとでも稼がんばやってられんでしょ。ましてや文句言われるなら尚更っす。』
地主『でも他人の土地で稼ぐなら少しぐらい払うのがスジだろ!』
Dai『だから自分は元々畑なんかいらねえんですって…』
こんな感じの押し問答を暫くして、結局年額1万円を払う事で恨みっこ無しで落としどころにしました。常識的に考えて完全にあたおかな話なのですが、農村コミュニティーではこの手の話は珍しくありません。冷静に考えればスジのおかしい話はホントに多いです。
◆稼ぐ農業で悪く言われる事は、ある!◆
これについては、ある程度想像は出来るかと思います。自分の住んでいる地域では、大半が米作ですが、自分の力で販路を開拓してちょっとしたブランド化で売っている農家もおります。ですが、その事について『あそこんちはセコセコ儲けてる!汚ぇヤツだ!』と言いふらされて、自治会の飲み会であからさまにハブられているのを見た事があります。自分的にはむしろ農家らしいと言えば農家らしいと思いますが…w。
メディアの影響も相まって、農業の社会的地位は随分向上したと思います。それでも旧態依然としたマインドが根幹にあるのは間違いなく、それそのもが農村及び農村社会の農業の衰退を招いた事は間違いないと思います。コレを一般企業に例えるなら『給料もらうヤツは卑怯者だ!そんなヤツは出ていけ!』と、言っているようなもんです。
勿論これが全てではないです。未来に向けて老若男女手を取り合って一生懸命頑張っている地域も確かにあります。ですが自分のような経験をしている人も全然珍しくないです。むしろそんな事無かったけどなぁ…なんて言う人が居たら、恵まれすぎているくらい恵まれている人です。
農業に夢を持つ人に程知って欲しい現実があります。昭和が過ぎ去り、平成を超えて令和になった今でも農業は仕事ではありません。同じ国土に根差して生活しているのに、こうも生きている時代が違うのかと思う事もあると思います。それでも農業は土地に根差し、土地に縛られるもの。置かれた場所で、咲くしかないのでしょう^^;
今回のお話はこれまでです。ご拝読、ありがとうございました。
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