兼業農家の普段の働き方は?農業に振り回されるサラリーマン生活
農業ではない主たる収入がある農家を『第二種兼業農家』と言います。兼業農家にとって農業とは基本的に『副業』という事になります。農業の方が本業で、冬の農閑期にだけ別の仕事を補助的にしている人も居ますが、多くはないと思います。
ではなぜ農業が副業になるのか。近年テレビなどでは生産活動や品種開発をしている立派なキラキラした農家さんが取り上げられる事も多くなり、その影響からなのか、農家=農業が仕事の人と思われるようになりました。直接言われるというよりは、SNSでのやり取りの中での話が多いですね。『Daiさんって兼業だったんですか!?てっきりガチの農家さんだとばかり…』と、言った具合に農業も仕事して社会に広く認められているように感じます。
この辺は地域差もあるかとは思いますが、新潟では農業は趣味の延長みたいなものであって、決して『仕事』ではないんです。現に義父母は今でも田んぼは仕事と思ってないと言っています。こういう昔の農家にとって仕事とは、朝出勤して夜帰宅するサラリーマンみたいなものを言うんですね。現に本人たちがそう言っていますw。
そこであくまでも自分の例ですが、兼業農家がどのようなワークスタイルで日常をこなしているのかお話しながら、これで日本の農業は大丈夫なの?ってところを突っ込んでみたいと思います。
◆◆兼業農家の労働条件
まず、農業を責任もってこなしていくにはそれをできる条件があります。一つは時間、もう一つは休み、もう一つはお金です。この三つの微妙なバランスで兼業で農家を回しています。
●兼業農家の時間
田んぼなら朝見回りに出る事がありますが、大体出勤前に行う事が多いです。田んぼまでの距離や全体の面積によって変わりますが、自分は軽トラで15分くらいで3町8反を回り終わります。結構なスピードですw。見るだけならコレで今のところ何とかなっていますが、三日に一回はじっくり1時間近くかけて見るようにしています。そうじゃないと何かトラブルが起きていても発見が遅れる恐れがあるからです。実際にそれでカメムシにチョットやられた事がありました^^;すぐに対策をしたので大事には至らなかったので良かったですが。
基本的に残業は無い方が良いが…
日本の会社は残業する事が基本です。残業無しで毎日定時で上がれる仕事なんて殆ど聞いた事がありません。役所の公務員ですら結構残業に振り回されると聞いています。窓口の方は非正規が大半なので、そうなると残業は無いそうですが。
稲作農家ですと、畑作と比べたらそこまで毎日忙しく何かするわけではないのですが、やはり残業は無い仕事の方が何かと安心して取り組めるのは事実です。仕事が終わって、帰宅して、支度して、田んぼに行って…と、していると家事をする時間は結構目減りします。我が家のようにフルタイム共働きで、片方でも残業三昧だとホント人生なんの為に生きているのか分からなくなりますw^^;
時間配分はそこまで自由ではない
結局仕事が始まる前に仕事、仕事が終わったら仕事という生活になります。そしてその時間配分が、水田稲作ではあまり自由ではない事。他の農家も同じように作業があるので、バッティングすると何かと面倒です。他の農家がいつ頃の何時頃に何をしているかで見回りや作業の時間を決めています。顔を合わせて挨拶程度なら良いのですが、これ幸いにと絡んでくる人も必ず居るので、関わると面倒です^^;
朝早くから機械の騒音を轟かせて作業しているのには、単に年寄りが早く起きてヒマだからではないそれなりの理由も絡んでいるんです。畑作などですとまた事情は異なるようですが。
●兼業農家の休日
コレは自分は結構悩まされましたね~(汗)、今でもかなり悩まされて大変な分野でもあります^^;
一応労働基準法では、『労働時間は一日8時間を上限に、一週間で40時間を上限とする』とあります。つまり完全週休二日制が労基法の基本という事になりますね。コレが法律通りに運用されていればまだ良いのですが、完全週休二日制の会社なんてまだまだ少ないのが現状です。マシなケースでも隔週休み、一ヵ月の稼働日数が固定されている会社では、祝日の数を土曜日で相殺する所もあります。
兼業農家は完全週休二日制が前提になっている事が多い
兼業農家のスケジュールの話をする時、一週間の内平日は会社で仕事、土日の休みの日に農作業…なんて言い方を、特にテレビや雑誌などのメディアではする事が多いのですね。なんなら農協に行ってもそんな前提で話をしたりします。
ですが現実は当然そんなに休日は多くなく、只でさえ少ない休日日数を農業にばかり充てているとそれ以外の事は何も出来ません。実際我が家ではお金も休日も少なく、兼業農家として会社での立場も弱い為、結婚式も新婚旅行も夫婦の幸せは全部諦めました。もうあれから10年か…。
農業の為に休みを取るのは大ヒンシュク!
我が家は米農家なので、初夏の田植えと秋の稲刈りの時にまとまった作業時間を確保するため、ある程度まとまった休日を会社に頼みます。会社と個人の関係によって変わる事もありますが、良く思われる事は無いと覚悟して下さい^^;。
自分は作業日程と仕事の都合を考えて休みをバラけて取らせてもらいます。人によっては一週間とか10日纏めて休む事もあります。これだけの日数休む社員って普通居ないです…そう、農家だけ休んで、空いた仕事の穴は他の社員さんが埋めてくれます。その社員さんの収入は増えませんが、休んでまで農業をやっていた農家はその収入がそれなりに入ります(全く入らない自分の様な人も居ますw)。そりゃそんな人が大手を振っていたらヒンシュク買いますよ^^;兼業農家だらけの新潟県でさえ、クソミソな扱いを受けるのは仕方の無い事です。
有給を融通してくれる会社もありますが、多くの会社は農業の為の休日は認めてくれません。いや、法律的にそんな事出来ないと言う話は無しで、だって週休二日すら無いんですからw^^;
●兼業農家のフトコロ事情
副業で農業やってて収入があると、経済的にもある程度有利ではないかと誤解される事が大変多いのですが、大半がジリ貧である事は間違いないです。メディアでキラキラしている農家さんでさえ、実際には結構大変なんですよ。当然ですが我が家もジリ貧です。コンバインが買えなくてマジでどうしようかってなった事もありましたしw。
農業をする為のサラリーマン家業
今も昔も農業は基本的に儲かりません。あんまり儲かる仕組みになると消費者が困る事になるのですが、その辺はまた別の機会に。
水稲稲作は日本の農業には珍しく最初から最後まで機械化が成立している分野なのですが、この機械を買うためにサラリーマン収入を結構犠牲にしています^^;むしろ機械が無いととても兼業でなんてやってられないですし、機械をシェアするなんて話もありますが、現実はとても都合なんて合わなくて余計な揉め事の原因にしかならないです。
他にも肥料や農薬、種子に至るまで、農業で農業のコストを賄いきれない事はよくあります。幸い我が家では何とかなっていますが、米価下落が止まらない現状、いつ赤字に転落してもおかしくないのです。
折角旅行や休日やイベントなどの家族の幸せを諦めてまでやっても、オチがこれではそりゃ誰も後継ぎなんかやりませんわw^^;
機械を買ってまでやる隠れた理由
『機械が高けりゃ手作業で出来る事は昔ながらの手作業で出来ないの?某有名番組、鉄○DASHでは手作業を基本にしてるよ?』そんな事を言われた事もあります。
そもそもそんな時間が無いから機械したわけなのですが^^;農家ならではの理由と言うか、他の家と違う事をしていると白い目で見られたり、変な噂を流されたり、最悪のケースでは嫌がらせを受けたなんて話も…。
にわかには信じがたいでしょうが、何処の農村でもあるあるの一つだと思います。農村の同調圧力はこうやって、圧力に留まらず実害に至るケースが非常に多いので、それに巻き込まれないための必要経費と捉えても卑屈な考えとは思いません。むしろリスクマネジメントくらいに言っても良いと思いますw。
稼げない農業の為に稼がなければならない
無理な時間配分でフルタイム労働するくらいなら、いっそパートとか期間労働とかで済ませりゃ良いじゃんと思うかもしれません。ですが実際には生活費以外に『農業をする為のお金』を稼がなければなりません。その上農業を頑張っていても社会保障費(年金や健保)はとても賄えません。家族まで大変な目に合わせてしまいます。なので無理してフルタイムでないとやっていけないのです。
◆◆農家は生かさず殺さず
農業は日本の基幹産業です。ですが農業は言う程仕事として認められていないのも現実です。今では農家さん農家さんと言ってくれる世の中になっただけマシなのでしょうが、趣味と違って基幹産業として食糧生産を担っている割には、その労働に対して理解が無いと感じてしまいます。まぁ、自分達で首を絞め合っている部分も多いですがw^^;
現在新潟を始め、各地で農地の集約化が進んでいます。農家戸数を減らして、一生産者あたりの耕作面積を増やし、効率よく生産量を上げようと言う取り組みです。我が家も近隣農家ではなく、地域に繋がりの無い信頼できる法人が出来たら農地を譲りたいのですが、現実はそううまくいきません。
小規模では兼業でもやっていけない、大規模にするにはまだ農家世間が追い付いていない。おまけにダークサイドは臭い物に蓋をされたまま、これではとても担い手なんてついてくれません^^;。単純にサラリーマンやっていくだけでも大変な世の中なのに…。でもコレが日本の農業のリアルです。勿論全部ではありませんが、農業に対して牧歌的なイメージを持っているのでしたら、改めた方が良いと思います。
自分はいつ頃ここから逃げられるか…、このブログに綴りながら現実と戦いるづけるしかありませんね~w^^;
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