農家の新しい収入源『作業請負』と、農地の借り受け – 農家辞めます! 
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2021-06-08

農家の新しい収入源『作業請負』と、農地の借り受け

 農家の収入源は基本的に作物の出荷売り上げですが、実はそれ以外にも様々な形の収入があります。代表的なのは畑などの農地のレンタルですが、近年の高齢過疎化に伴い現役農家が農作業を請け負うという形の農業が目立つようになってきました。かく言う我が家も田んぼごと預かっている他に、稲刈りだけ頼まれる作業委託も請け負っています。

 そんな農家の作業請負、これからの農業の新しい形の収入源として確実に定着していく事でしょう。農家の多くは田んぼや畑自体は手放す事は殆どありません。ですが、農地を所有してるのに耕作を行わない事が近年非常に問題視されています。耕作を放棄した農地からは農業害虫が発生し、近隣の畑や田んぼに大なり小なり被害を及ぼしています。『田植えは機械があるからできるけど、稲刈りは高価な機械を持っていないので行えない』などで最終的に耕作放棄に至る事があるようです。

 そこで、個別の農家では行えない作業を、機械や技術を持っている別の農家に作業だけ委託すると言う訳です。

作業委託は相場がある

 上の画像は地元の農協から発布された作業委託に関わる料金の目安です。実際に請負で作業を行っている農家から聞き取りをしたうえで、適正であろう料金をこのような形で公表しているようです。

 実際の作業料金は、請け負う側と委託する側の両社で協議するようにとの事。この辺実はブラックボックスなので、義父が誰と、どのような取り決めをしたか自分は分かりません。農家同士でも基本的にはタブーなので、直接関係無い農家との何気ない会話の中にも、自分が作業請負をしている事はうっかり話さないようにしています。

料金の特徴

 料金を決めるうえで重要な単価の根拠は、基本的に農地の面積で決定しています。10aはおおよそ一反。新潟の兼業米農家が所有している田んぼの面積は、一軒あたり2反~1町(10反)くらいが多いです。委託をする場合大抵は全部任せる事が多いので、例えばトラクターによる耕起作業を1町頼まれた場合の料金は54,000円という事になります。

 作業に掛かる経費も込みなので、この料金を持って売上とし、ここから機械に関わる経費(燃料代や整備費)などを差し引いて粗利とします。

 収入源としてはかなり細やかになってはいますが、持っている機械や技術をそのまま使えるうえに、自分の田んぼ作業の合間にこなせるので、仕事としては無理はないと思います。

実際のやり取り

 ではどんなタイミングで作業を請け負う事になるのか。ルートは大きく分けて二つ、近隣の農地所有者から直接頼まれる場合と、農協や農業委員会から間接的に頼まれる場合です。我が家は近隣の農家から直接頼まれて作業を請け負っています。今の時代では殆どが近隣農家から直接作業を委託される事が大半だと思います。

 農協などの第三者から間接的に話が回ってきた場合、頼みたい側が『誰に頼んで良いか分からない、アテが無い』と言った事情があるので、ややこしくなりがちです。

農地そのものの借り受け

 作業委託は『料金を受け取って作業を行う』ので単純に売り上げになるのに対し、『こちらが賃料を払って農地を借り受ける』という形で農業を行う事もあります。これは逆に単純に経費となります。

作業請負と農地賃貸の決定的な違い

 作業請負を依頼してくる農家は大抵、ある程度の作業は自分で行っている事が多いです。そのうえでコンバインなどの高価な機械が買えないなど、負担が大きい部分をアウトソーシングしてきます。

 対して農地の賃貸は、『もう完全に農業ができない』状態の家である事が殆どです。高齢化や後継ぎ無しなどの事情が多いです。

家賃を払うくらいなら全部作業請負でした方が儲かるんじゃない?

 田んぼ自体を家賃を支払って借り受けるよりも、作付けから収穫まで全部請負料金でやった方が儲かるじゃんと思われる事もあると思います。一応『全面委託』という形で一枚目の画像の通り63,000円程の売り上げが見込めますが、家賃を払って自由に作付けした時とどれ程変わるのでしょうか。

10a当たりの収益の見込み

 ここ数年のコシヒカリ一般の一俵(60kg)辺りの引き取り相場が概ね16,000円程でした(集荷業者や同じ新潟でも産地によって結構違います)。

 10aから収穫できるのが大体8俵程度です。むしろそこを目指して栽培しているので、本当は何が何でも8俵取りたいくらいです。作が悪い年などは7俵を切る事もあります。

 それを踏まえると10aあたりのコシヒカリ一般の売り上げが128,000円程度という事になります。そこから家賃を含む経費をガンガン引いていくと85,000円くらいはなんとか残ってくれます。そこから更に税金を差し引いて、いく形になります。

  全面委託の場合を考えると、税引き前なら家賃を払ってでも自分で自由に作付けした方が手取りは増えるようです。

不作や相場落ちでは全面委託の方が強い場合も

 三年前の酷暑の年は信じられないくらい不作となりました。赤字スレスレか、最早赤字と言っても良いくらいでした。そんな時は決まった金額が入る作業委託の方が安定はします。そうでなくても自分で自由にやれば何かしらのリスクには晒されるので、そういう意味では委託はリスクヘッジの意味もあるかもしれません。

貸す側は当然家賃収入を欲しがる

 農地を持て余しているような人は、当然作業委託よりも賃貸を希望してきます。先祖代々の土地を売り払わなくて良いし、毎年少なからず収入があるので。明らかに売った方が今後お孫さんとかに迷惑を掛けなくて済むような条件でも頑なに売却を拒みます。正直そんなに愛着があるなら自分で耕作してよって思いますがw^^;。

それ以外にも、近隣との人間関係の事で近所の農家に売りたくないという事もあります。

 とは言え今後日本中の農村が高齢過疎によって変化を求められるようになっていくでしょう。当然農業も持続可能性を望むなら『金の話から逃げるな』と言いたいです。日本は資本主義社会なので、絵本のようなイメージのある牧歌的な農業なんて夢見るんじゃなくて、お金とか人間関係とかもっとリアルな部分と向きあった方が良いと思っています。

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コメント4件

  • 十苦農家 より:

    私の地域では、小作料が10a5,000円です。お隣の字では8,000円程度、これは水利費(年間11,000円/10a)を耕作者が負担するのですが、離農者より耕作者寄りの金額設定です。

    • Dai より:

      十苦農家さん、ご無沙汰です!
      コチラの地域と比べるとややお安めに見えますが、作物の取り分など仕組みが違うのでしょうか。水田が大半の新潟では作業自体は外注しますが、採れた米は委託者が自分の名前で出荷する事が多いです。我が家では完全離農者から田んぼを預かっているので、全て我が家の名義で米を出荷しています。水利費や土地改良費は結構負担に感じますね~^^;

    • 十苦農家 より:

      その完全離農がほとんどです、多分ですが90%以上それです。ですので完全委託となり、地主が亡くなり相続先が誰か判らない時もまれにありまして困惑します。それより何よりも離農=非農家という図式がこちら(関西)では一段と強まり、ついこの前まで田植えしてた人に “道を汚すな、ホコリを出すな” と言われる始末です。とか言ってる私も65歳で稲作は引退する予定です。もう数年です。

      • Dai より:

        十苦農家さんの所でも同じような問題を抱えているんですね(汗)これからは作業請負と言うよりは、完全離農者からの委託が中心になるのでしょうか…。
        それは酷い!あんまりです!だから農民は××なんて言われるんですよ^^;。やんわりした言い方をするならへそ曲がりなんでしょうが、何十年と生きた大人が自分を棚に上げて一体どういうつもりで生きているのでしょうか…。やっぱりこの国の大人達は子供や若者にエラそうな事を言ってはいけませんね^^;。
        十苦農家さんは時期にご勇退なされるお考えなんですね。気の利いた事は言えませんが、お疲れさまでした。あと数年、せめて何事も起こらず、その後は細やかに畑でも耕されるのでしょうか。辞めるも続けるも大変な農家、穏やかでありますように。。。

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